「赤い天使」




赤い天使 (1966年 大映 監督:増村保造 主演:若尾文子芦田伸介川津祐介 他)
8年前、喉の手術をした時に2週間入院しました。生まれて初めての入院生活で看護士さんの献身的な仕事ぶりに触れて、心から思ったのです。この人達は天使だと。この映画のタイトルを見たときに、その頃の事を思い出しました。「赤い」というのは、思想的な事ではなく(笑)、そのまま「血」の事です。要するに血まみれの天使。純白の看護服を真っ赤な血で汚しながら献身的な仕事をする看護婦。あえて看護士ではなく看護婦と言いたい。「卍」で若尾文子増村保造監督の魅力にとりつかれてしまい、次に見たのはこれです。若尾文子演じる満州陸軍病院の看護婦、西さくら。優秀な外科医なのに戦場では手足を切断する事に追われて苦悩する岡部軍医。明日の命もわからない戦場で愛し合う2人。戦争の悲惨さを描いた反戦映画という捉え方と、愛する男に命を捧げる女の気高さ、極限の環境で結ばれる深い愛を描いた映画ともいえます。とにかく惹かれたのは、主人公、西さくらとそれを演じる若尾文子の魅力。自分のことを「私」ではなく苗字の「西」と呼ぶところに、自分を客観視し従軍看護婦としての職務を全うしようとする覚悟を感じるのと、単純にそのセリフ、声の響きに萌える(笑)まず冒頭から若尾文子演じる西の魅力に引き込まれるのに、話が始まって間もなく入院している兵隊に犯されてしまうシーンがあり、胸が苦しくなります。かと思えば、兵隊の手術で手足を切断する場面ではノコギリのギーコギーコという音が生々しくてゾッとします。両腕を失った兵士が性欲に苦しむ姿やその処理を手伝う西の姿に共感と羨ましさを感じたりします。そして岡部軍医の無骨で男気のある姿とモルヒネ中毒になる内面の弱さに人間味を感じます。このように、とてもリアルに感じる場面が沢山あるのですが、監督がリアルに伝えたいと思っているところがわかりやすく、しかもストレートに感情を揺さぶってきます。印象的なシーンは最後の晩に岡部軍医が西に軍服を着せて戯る姿。たまらなく沁みます。下着といってもノースリーブのワンピースのような感じで、現代ではセクシーではない格好ですが、その若尾文子の姿が、たまらなく色っぽいです。最後にキスマークが認識票になるという演出もニクい。増村保造監督と若尾文子のコンビは何作もあり、僕はまだこれで2作目ですが、2人のことが大好きになりました。これはかなり良い映画だと思います。