「氷点」




氷点 (1966年 大映 監督:山本薩夫 主演:若尾文子、安田道代、船越英二山本圭津川雅彦成田三樹夫 他)
三浦綾子の小説を映画化したもの。当時はかなり人気で、小説は売れ、この映画の他にもテレビドラマ化されています。僕はこの映画で初めて知りました。あらすじとしては、船越英二演じる医師の啓造は、若尾文子演じる妻の夏枝が成田三樹夫演じる村井と不倫中に、3歳の娘ルリ子を殺されてしまう。ルリ子の代わりに女の子が欲しいと言う夏枝に啓造は夏枝への復讐心から犯人の娘を引き取り育てる事に。その子は陽子と名付けられ夏枝に愛されて明るく素直な子に育つ。ある日、夏枝はドイツ語で書かれた啓造の手紙を読み、真実を知ってしまう。そこから夏枝は陽子に愛情を注ぐことができなくなり、イジメに近い状態に。兄の徹は両親の言い争いから真実を知ってしまう。徹は陽子を女として愛してしまうが、兄として我慢し大学の友人である津川雅彦演じる北原に陽子を紹介する。北原と陽子はお互いに惹かれ合うが、夏枝はその二人を引き裂こうとし、真実を伝えてしまう。自分の親が殺人犯と知ってショックを受けた陽子は自殺を図るが、実は殺人犯の子では無いとわかり・・・といったコンパクトにまとめにくい内容ですが、とにかく重い。キリスト教の概念である「原罪」がテーマとの事です。最後まで夢中で見ましたが、どこかモヤモヤする。ひっかかる気がしました。で、冷静に考えると、疑問が沢山浮かびます。そもそも娘を殺されてすぐに子供を引き取りたくなるものか。長年愛情を注いで育てた娘が殺人犯の娘と知って、そこまで冷酷になれるものなのか。妻への復讐心から殺人犯の娘を育てさせる事はありえるのか。普通は離婚しないか。自分の親が殺人犯と知って自殺したくなるものか。そんな事を思いました。が、しかし、これは弄れた考え方かもしれません。フィクションとして、こんがらがった愛情と嫉妬と恨み、ドロドロな人間関係に心を揺さぶられるのを楽しむには最高です。とにかく若尾文子の意地悪な態度が堪りません。本当に性悪な女になっています。そして天真爛漫な陽子を演じるのが、翌年「痴人の愛」で奔放な女ナオミを演じる安田道代というのも面白い。そして不倫相手の成田三樹夫の悪そうな存在感、津川雅彦の爽やかさ、船越英二の堅物な役のハマり具合、など、どのキャストもいい感じ。しかし若尾文子には今回もやられたなあ。素晴らしい。