贋の寺



贋の寺(1962年 大映 監督:川島雄三 出演 若尾文子、高見国一、木村功三島雅夫 他)
川島雄三監督と若尾文子と言えば、「しとやかな獣」が大好きな作品。その流れで「雁の寺」と「女は二度生まれる」をずっと観たかったのです。原作は水上勉で自身の幼少期の境遇、その頃経験した寺暮らしがモチーフになっています。堕落した僧侶を描いている事から、公開当時は仏教界から反発があった事も頷ける内容。なかなかのストーリーなので、あらすじは書きませんが、この映画を見始めて最初に感じたのは、若尾文子の存在感の大きさ。他の映画でもそうですが、僕は若尾文子の声が好き。いや、声も好き。そして京都弁のセリフが堪らないのです。若尾文子演じる里子は画家の愛人であり、その画家が亡くなり、画家が書いた贋の絵を収めた寺の住職に囲われるのですが、三島雅夫演じるその住職のクセの強さ、いやらしさがとても良い。その住職の元で修行している若者が原作者の水上を投影したであろう高見國一演じる慈念。その厳しい修行に耐え、いろんなものを抱えた鋭い眼光に寒気を覚える。話が展開していく中でそれが必然に思えてくるのも面白い。原作の良さもあって、最後まで一気に観る事ができる。この映画で改めて感じた事は2つ。川島雄三監督のセンスの良さ。一番気に入ったのは、慈念が肥溜めを掃除するシーンで、肥溜めの中からその姿を捉えたところ。そのカメラアングルはとても新鮮でした。そのシーンから、カメラのアングルが気になってしょうがなかったのですが、いいなあ〜と思える場面が沢山ありました。場面の表現の仕方、切り取り方、見せ方がとても上手くて、僕は大好きになってしまいました。考えてみたら、「しとやかな獣」もそうだったなあ。もう一つは、若尾文子の色気。どの作品を観ても改めて好きになってしまう。ヌードが無いのに、これだけセクシーな女優さんはなかなかいないと思う。