「妻は告白する」



妻は告白する (1961年 大映 監督:増村保造 主演:若尾文子川口浩小沢栄太郎、馬淵晴子 他)
若尾文子演じる彩子は夫と夫の仕事関係で知り合った若い男、修と3人で登山へ行き、崖から滑落。修は岩にしがみつき、ザイルでつながった彩子と夫は宙釣りになる。このままでは3人とも崖から落ちて死んでしまう状況。夫は一番下でもがき、真ん中で挟まれて苦しい綾子はナイフでザイルを切り、夫を落として殺してしまう。その殺人罪を問う裁判を軸に、物語が進みます。もともと結婚生活は上手くいっていなかった、修に惹かれていた、そのあたりの状況が裁判の進行に合わせて明らかになっていきます。婚約者もいる修は裁判中に修を頼る彩子に惹かれ、2人は愛し合う。最終的には、無罪になるものの、その後、彩子からずっと修を愛していたこと、そして夫への殺意を告白される。それにより修は愛が醒めてしまい・・・という話。修の婚約者は彩子の修への感情に気づくものの、裁判では彩子に有利な証言をする。その理由は、嫉妬にかられる自分が惨めに見えるからという場面が、女の自尊心を感じ、目立たないけれど心に残ります。終盤でも修に対して、断罪する言葉を投げかけますが、冷静でキレる役柄、そして美しく、存在感がとてもあります。修に突き放されて、とうとう会社まで来てしまう彩子。1ヶ月、半年、1年、2年に一度でもいいから会って欲しい。そう復縁を懇願する悲壮な姿、ボロボロの姿がたまらなく儚くて美しいのです。結局、誰も幸せにならない話で、どんよりしながらも女の情念の深さが心に残ります。そして、若尾文子の美しさがとにかく際立っています。エロいシーンは無いのに、めちゃめちゃ色っぽいです。裁判の答弁の様子は淡々と、ときに感情をあらわにしているのですが、真意が解らない、謎めいた気分になりますが、その不思議さが役柄かもしれませんが、若尾文子の魅力にも思えてしまうのです。乱暴な言い方をすると、ストーリーや脚本を若尾文子の魅力で5割増にしたような映画に感じました。