「痴人の愛」




痴人の愛 (1967年 大映 監督:増村保造 主演:小沢昭一、安田道代、田村正和、倉石功 他)
以前から気になっていた増村保造監督の「痴人の愛」を観ました。なぜ気になっていたかというと、女性が真面目そうな男性に馬乗りになっているDVDのジャケに目を惹かれたのです。不謹慎ではありますが、どう考えても面白そうな絵で、一度観てみたいと思っていたのです。調べてみるとこれは谷崎潤一郎原作で何度も映画化されているようです。主人公のナオミの奔放な女性像が印象的な話です。ここでのナオミ役は安田道代で、日本映画に詳しくない僕はこの女優さんの事はあまり知りませんが、とにかくセクシーで肉弾的な感じがしました。日本映画初心者の僕には詳しいことはわかりません。ただ、67年という時代にこのような映画が作られていた事に驚いたし、映像や演出、ストーリー展開など、ものすごく新鮮に感じました。当時はかなりエロい映画だったと思います。小沢昭一演じる真面目でいて内面に狂気を抱えた男がはじめは自分の理想とする女性を育てるつもりが、次第に惑わされ、最後には服従するという姿がクレイジーでいて共感を覚えるのでした。小沢が他の男と一緒にベッドに並んで横たわり、嫉妬心にかられながら安田道代の足を舐めるシーンが印象的でした。人を好きになる感覚、好きだという感情に囚われてしまう姿、好きという感情がエスカレートした果ての狂気、嫉妬、苦悩、これらは時代を超えたものであると実感しました。この原作を知っている人や映画化された他の作品を観た人の評価はどうなのか判りませんが、僕みたいな素人にしてみると、日本映画に対する好奇心を掻き立てるには十分な作品。これを機に増村保造監督の作品、安田道代の作品をもっと観たいと思います。