巨人と玩具



巨人と玩具(1958年 大映 監督:増村保造 出演 川口浩高松英郎野添ひとみ 他)
57年に大映で監督デビューした増村保造監督の5作目。キャラメル会社3社がシェア獲得に向けて広告合戦を繰り広げる競争社会の現場を描いた作品。川口浩演じるキャラメル会社の広告担当、西の実直で直向きな姿と競争社会の中で生き残る為に自分を犠牲にしていく上司、高松英郎演じる合田の対比が良い具合にストーリーを引き立てる。後半に向かって見せる合田の狂気が、競争社会の中で実際にこんな事あるんだろうな、と、妙にリアルに感じさせる。キャラメルのマスコットとして起用されて普通の女の子から人気ものに仕立て上げられる少女、野添ひとみ演じる京子は、決して魅力的では無いのだけど、西や合田のもとを離れて再開した時の姿は別人で、役柄ではあるものの、同じ女性でも全く印象が変わる、その見せ方の上手さに驚いた。京子がコンサートで歌う土人の歌のシーン、京子が西のもとから走り去って、それが原因で車が追突してドライバーが喧嘩になるシーンなど、普通の映画ならサラッと描くようなシーンをしっかりと見せるところも面白いし、そんな場面があちこちに散りばめられている。キャラメルを製造する工場のシーンも競争社会を象徴しているように感じるし、場面の切り取り方や訴え方が上手い。それぞれの場面にいろんなメッセージが込められている気がして、全体的に力強くこちらに向かってくる感じがする、エネルギッシュな映画だと感じました。