億万長者



億万長者(1954年 青年俳優クラブ/大映 監督 市川崑 出演 木村功久我美子山田五十鈴伊藤雄之助 他)
青年俳優クラブが自主制作した映画。当時は第五福竜丸の事件があったり、原水爆が注目されていた時期で、この映画でも原爆で家族を失った娘が自分で原爆を作る姿が軸になっている。基本的には喜劇なのだけど、ブラックユーモアという感じで、社会風刺の色が強い。木村功演じる舘香六は無口で気が弱い税務署の職員で、ある事がきっかけに不正を暴こうとするが、沢山の子供を抱えた貧乏な家族や腐敗した政治家、汚職に手を染める税務署員、舘を騙そうとする芸者などなど、貧困と金持ちが混在して様々な矛盾が渦巻くその時代を上手く描いている。いや、僕はその時代の空気を知らないから、描いていると感じる。出てくる人物が大人も子供もとても個性的でリアルに迫ってくる感じが良い。脇役だけどひっかかる伊藤雄之助の存在感もさすが。基本はコメディだけどズッシリとした重みを感じる不思議な映画。