乱れる



乱れる(1964年 東宝 監督:成瀬巳喜男 出演 高峰秀子加山雄三草笛光子白川由美三益愛子 他)
成瀬監督の作品を立て続けに見ていますが、この作品で成瀬監督と高峰秀子の良さが分かった気がします。僕は評論家じゃないしマニアと言えるほど観ていないので偉そうに言えませんが、成瀬監督はその時代に生きた人々、特に女性の姿を描く事に長けていたのだと思います。もちろん、俳優の使い方も上手いのでしょうが、切なさ、怒り、やるせなさ、驚き、悲しみ、喜び、といった心の動きが伝わってくるのです。当時には今の時代では考えられないような常識や感覚があって、でもそれは古いとか時代という言葉で片付けるには、あまりにも勿体無いものであり、現代に生きる人にこそ観て欲しい、知って欲しいものだと思いました。許されない愛、受け入れて欲しい、受け入れたいけど受け入れられない、どうしようもない葛藤、救いようの無い物語だけど、ジワジワと心の中に沁みていく映画。高峰秀子の表情、演技にやられました。加山雄三がとてもカッコイイ。多分、当時の演技はそれほどだと思うけど、それを上手く生かしている気がします。草笛光子白川由美三益愛子も素晴らしい演技。乱れるというタイトルは何故かな、なんて思いながら観ていましたが、途中で、心が乱れるという意味か!と妙に納得しました。それがエンディングの高峰秀子の表情を観て更に納得しました。とても好きな映画です。