雨月物語



雨月物語(1953年 大映 監督 溝口健二 出演 京マチ子水戸光子田中絹代森雅之 他)
上田秋成の「雨月物語」の中から「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編をベースに脚色された物語。舞台は琵琶湖、長浜という少し前に旅行で行った馴染みのある場所という事でなんだか身近に感じながら観ました。物語は焼き物を焼きながら暮らす貧しい農民の夫婦とその親類夫婦が、一儲けをしようと焼き物を町で売ろうとするところから進んでいく。妻と子供を愛していた貧しい農民が町で出会った京マチ子演じる幻の女に翻弄され、我を忘れてしまう。幻と気付いた時には大切なものを失っていたという、何とも心に響くファンタジー。人間の弱さと優しさ、強さが上手く描かれています。惑わす女、男を信じる女、男に絶望する女、いろいろな女の姿、情念が描かれていて、女は怖い、女は貴い、女はいいな、なんていろんな感情を抱くことができる。京マチ子の妖艶な演技が良い。関西弁の気の強い女を演じるイメージがあったのですが、この作品では京マチ子の違った魅力を感じました。改めて、いい女優だなあと思いました。そして森雅之も素晴らしい。ストーリーも役者も演技も充実の良い作品だと思います。