女系家族

女系家族（1963年　大映 監督：三隅研次　出演 若尾文子、京マチ子、中村鴈治郎、鳳八千代、高田美和　他）
座頭市や眠狂四郎などで有名な三隅研次監督が女系の家の遺産相続を巡るドラマを描いた作品。大阪の老舗木綿問屋である矢島商店は女系であり婿養子が継いでいる。社長である嘉蔵が亡くなり、その娘、三姉妹に膨大な遺産が相続されることに。姉妹の間だけでも確執が生まれるのに、そこに若尾文子演じる嘉蔵の愛人、文乃が現れ、さらにざわつく。相続の調整を引き受けた大番頭もこっそりと悪事を働くなど、お金を巡るそれぞれの欲望が上手く描かれている。若尾文子の役どころ、演技は言うことなしで、後半に見せる、企んだ微笑みが堪りません。あのカットだけでも見る価値があります。長女藤代の性格の悪さを上手く演じる京マチ子も良い。何より、大番頭を演じる中村鴈治郎は主役といってもいいほどの存在感。お金を巡る人間の卑しさや欲望を描く題材といい、ラストにスカッとさせるストーリーといい、個性が生かされた配役といい、最後まで飽きさせない、とても面白い映画です。