浮雲



浮雲(1955年 東宝 監督:成瀬巳喜男 出演 高峰秀子森雅之、岡田 茉莉子、加東大介 他)
ずっと気になっていた作品でしたが、先日、得三の森田さんと映画の話をしていたら、成瀬巳喜男高峰秀子浮雲は最高だぞ。という言葉に押されて、すぐ見ました。物語は戦時中のベトナムから始まります。農林省の役人である森雅之演じる富岡とそこへタイピストとしてやってきた高峰秀子演じるゆきこが出会い恋に落ちる。終戦後、富岡は妻と分かれると言って日本に引き上げ、その後、富岡の家を訪ねたゆきこは富岡がまだ妻と別れていない事を知ります。その後、ゆきこは米兵の娼婦になり、富岡も仕事が上手くいかず、再開した二人は寄りを戻して伊香保温泉へ。そこで出会った飲み屋の主人と意気投合しそこに泊まる事になるが、その妻である岡田茉莉子演じるおせいと富岡が関係を持ち・・・といった具合に、富岡は優柔不断で女にだらしのない男ですが、何とも言えない色気があるのです。ゆきこはそんな富岡から離れられないのですが、時には強く、時には弱く、どれが本当の姿なのかわからなくなるくらい、気持ちが揺れる様がとてもグッと来ます。一瞬、幸せな時間が訪れた時の儚い姿が堪りません。ダメなことは分かっているし、将来は明るくないと分かっているのに離れられない、分からないけど理解できる、そんな恋愛の本質を描いた映画だと思います。ラストに向っていくところは幸せと終末が迫る何とも言えない切ない気分にさせられます。エンディングで原作者の林芙美子の詩「花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき」が映し出されて、参りました。という気分にさせられました。これは名作だと思います。あと、おせいを演じた岡田茉莉子、役柄といい、気の強そうな表情といい、若い色気といい、ザワザワっときました。