秋津温泉



秋津温泉(1962年 松竹 監督 吉田喜重 出演 岡田茉莉子長門裕之、日高澄子 他)
岡田茉莉子の主演100本記念で自身も共同プロデュースを担当。監督は後に夫になる吉田喜重。戦争で生きる気力を無くした青年、長門裕之演じる周作が秋津温泉にたどり着き、温泉宿の娘、岡田茉莉子演じる新子によって生き返る。そのまま恋に落ちるが女将に追い出されて周作は街に帰る。周作は結婚し子供も授かるが生活に行き詰り再び秋津温泉を訪れる。酒と女に溺れ堕落した周作に呆れる新子だが、再び惹かれあう。そしてまた月日は流れ、また周作は秋津温泉へ。結局17年間の間、愛する男を待ち焦がれる新子、身勝手な周作。最後の別れに新子は自らの手首を切り・・・といった話。女の愛の深さと身勝手な男のどうしようもない姿が何とも切なく、救いようがない話。少女の純粋な優しさと希望に満ちた笑顔と愛情、恋する姿、恋が敗れる絶望感、愛する男を待ち焦がれる姿、ダメだと思いながら止められない気持ち、疲れ果てて希望を失う姿、それぞれの女を岡田茉莉子が演じきっていて、素晴らしい。とにかく岡田茉莉子の魅力が満載。旅館での周作とのやりとり、追いつ追われつ抱きしめ合う姿、切ない表情や立ち姿、言葉だけでなく表情や動きから感情が伝わってくるようで、目が離せません。どう考えてもハッピーにならない事が予感できる音楽もすごい。改めて、映画における音楽の重要性を感じました。岡田茉莉子という女優の素晴しさはもちろん、全体を印象づける風景や建物の素晴らしさ、救われないストーリー、胸が締め付けられます。これは素晴らしい映画だと思います。