木下航志「KIZUNA」


先日、FMを聴いていたら、どこかで聴いたような声。
この舌足らずな感じ、スティービー・ワンダーみたいな節回し、
もしかして、こ、これは・・・
曲を聴き終わって、DJが“2月10日デビュー、キシタコウシの絆でした”
と一言。・・・やっぱり!そうか、デビューか。
航志くんを知ったのは、もう何年も前のこと。
盲目の天才少年を追ったNHKのドキュメントを見て。
幼い盲目の少年が力強く生きている姿に、そしてピアノを弾いて唄っている姿に、
完全にやられてしまった。もう涙が止まらなかった。
それは決して悲しいとか可愛そうとかではなく、幼い少年に、人間の逞しさ、
壁に必至に立ち向かう姿を見せ付けられて、純粋に感動してしまった。
その後、“HARMONIX”というグループでCDが出ていた(確かインディーズ)事を知り、
早速購入。まだ荒削りで、いかにも未完成だけど、音楽をやっている人なら誰もが目指
しているけど、なかなか辿り着けない領域に、既に足を踏み入れている・・・
と感じた事を思い出す。そして、メジャーデビューになるこのミニアルバム。


木下航志 「KIZUNA」
16歳になったんだ・・・ジャケの喉仏を見てしみじみ。声も少し大人になった感じ。
しかし相変わらずの世界。シングルになっている「絆」は、最初はちょっと歌詞が臭い
気がしたけど、聴いていると沁みてきます。
残念なのは歌詞は本人が書いていないところ(作曲は1曲を除き全て本人)。
あと、スティービー・ワンダーを意識したようなアレンジやハーモニカの音なんかは、
ちょっとベタすぎる感じが・・・まあ、それでも十分、素晴らしい内容ですが。
これから何十年も唄いつづけ、自分の言葉で、しかも一番純粋なピアノの弾き語りなんかで
唄われたら・・・想像しただけでも恐ろしい。
10年後、20年後、もっと先まで楽しみだと思える、数少ないアーティスト。