飢餓海峡



飢餓海峡(1965年 東映 監督:内田吐夢 出演 三國連太郎左幸子高倉健伴淳三郎 他)
水上勉の代表作で183分という大作。これも前知識なしで、ただすごいタイトルだなあ。長いなあ。でも気になる。そんな感じで観始めました。ところが、冒頭からすっかりのめり込んでしまいました。主演の三國連太郎はもちろん、左幸子伴淳三郎の演技が素晴らしい。ストーリーもしっかりしているし、それぞれのシーンの描き方も丁寧。映像も同年代〜それ以前の映画とは少し違う、乾いた感じに思えた。北海道から東北、東京、舞鶴と舞台は動くが、それだけでないスケールの大きさを感じる映画。あとで調べたら、この映画の制作〜公開にあたって、かなりゴタゴタしたドラマがあったようで、スケールの大きい映画を完成させる為には情熱とお金と人間が複雑に絡み合うものなのだな、なんて思ったりして。そういうものを抜きにして、何も知らずに観た僕の感想は、見ごたえのある良い映画。僕が特に印象に残ったのは、左幸子演じる八重が犬飼が残した爪を触り、恍惚の表情で悶えるシーン。とても官能的であり、誰かに見られたらどうするの?というドキドキ感と、女性の愛の深さ、切なさが襲ってくる名シーンだと思います。